『左官礼讃』という本をたまに開く。見開き2頁で読み切りの、全て左官に関る、各々に題のついた文章がおさめられた428頁の本。たまにこの本を手に取り「聖書」か「あいうえお絵本」かなにかのようにパタンと開いてみる。どの2頁にも、ものやことの本質に触れることしか書かれていない本で、だから、著者の小林澄夫さんがそういう方ということ、そういうことにしか惹かれない人なのだろうな。
今日読んだ中から少し書き出してみましょうっと。

「・・・それゆえに、左官職は、下地の意味、下塗りの意味、中塗りの意味、仕上げの意味といったものがあらかじめじぶんのあつかう建材にあるのではなく、それぞれの素材から意味があらわれるのを待つのだ。・・素材の無償性を生かすこと、・・出来るだけ多様な意味をそこから救済しようとすること、そこに技術ということがあるのだ。・・」(30〜31頁「土のことは土に習え」から)

「・・・誰もが建築の進歩をいう。誰もが、建材の進歩をいう。果たして建築は進歩するものであろうか?あるいは、建築は進歩する必要があろうか。必要と必然とは違うということ、工業化と経済成長の必然と人間の必要とはちがうことではなかろうか?・・・」
「とまれ、建築の進歩ではなく土蔵の夢を語ろう。土蔵が二百年、三百年と抱えてきた闇の過激な優しさについて語ろう。それを語ることは、ほんとうの技術について語ること、職人の夢を語ることになろう。・・・」(264〜265頁「土蔵の夢」から)

「美意識」と題された2頁を読んだときには、胸がきゅうっと熱くなりました。
この本を紹介してくれたのは、数年前に個展でお世話になった新宿のカフェ/ギャラリー・ユイットの天野太介さんでした。福岡の石風社という出版社刊なのですが、2001年の8月15日(選んだ日なのですね、きっと)に出版されていて、私のもとめたのは2003年で二版第五刷の本でした。多く読まれているのですね。


2005.
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